 |
 |
 |
 |
血液生化学検査では総ビリルビン16.1mg/dL、直接ビリルビン11.9mg/dL、D/T比0.73、AST3,971U/L、ALT6,469U/Lと著明に増加していた。肝合成能の指標となるアルプミン3.8g/dL、コリンエステラーゼ153U/L、総コレステロール106mg/dLは軽度の低下を示し、血中アンモニアは107.5mg/dLと高値を示した。これらのことから、急性肝炎が疑われた。
ウイルス学的な検索では、IgM-HAV抗体とHCV-RNAは陰性であった。海外渡航歴や魚介類の生食経験もないことからHAV感染は否定的であり、またHCV感染も考えられない。一方、HBVマーカーは明らかにB型急性肝炎を示しており、発症から意識障害(肝性脳症)が出現するまで7日であることから、B型急性肝炎による劇症化と診断した。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
| |
本症例は、入院時に行った腹部CTでも肝容積は310cm3と著明に縮小し、脳症はIV度、プロトロンビン時間は8.1%と肝細胞破壊が進み、かなり重症化した症例であったが、入院時にすでにトランスアミナーゼのピークを越え、しかも直接ビリルビン/総ビリルビンの比が0.73と低下しておらず、まだ肝臓の抱合能は保たれている症例であると考えられた。
治療上の対応としては、肝炎をできるだけ早く鎮静化する目的でステロイドパルス療法とその漸減を行った。入院と同時に血漿交換と血液濾過透析を組み合わせた人工肝補助療法を開始した。肝性脳症がIV度まで進展した症例であったが、大量の透析液と置換液で血液を浄化することにより、特に合併症を起こすことなく5日目には受け答えが可能になり、7日目には意識が完全に清明となった。肝機能は入院後から急速に回復し、トランスアミナーゼは一峰性に低下し、プロトロンビン時間も次第に回復していった。Real time detection PCRで血中ウイルス量をモニターすると、速やかに減少していくことが確認された。 |
|
|
 |
 |
 |
| |
| 劇症肝炎には遺伝子の中のcore promoter(CP)領域やpre- core(PC)領域における変異が関係している(表1)。CP領域やPC領域ではHBe抗原を作るが、その部分の変異によってHBe抗原を作らなくなる。つまり劇症肝炎はHBe抗原が陰性のものがほとんどである。感染源であるHBVキャリアはCPやPC変異でHBe抗原陰性となり、予後が非常に良いが、いったん他人に感染させると劇症化させる可能性が高いことが明らかになった。 |
| |
表1 B型急性肝炎患者と劇症肝炎患者の遺伝子変異の比較 |
変異 |
急性肝炎 (n=234) |
劇症肝炎(n=30) |
P 値 |
1753 and/or 1754 |
29 (12%) |
10 (33%) |
.0053 |
1762 and 1764 (CP) |
38 (16%) |
15 (50%) |
< .0001 |
1896 (PC) |
23 (10%) |
14 (47%) |
< .0001 |
1899 |
11 (5%) |
5 (17%) |
.0240 |
|
(Ozasa A, et al: Hepatology 44: 326-334, 2006より) |
|
|
 |
 |
 |