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血清アルブミンの多面的機能とその解析
岐阜大学大学院医学系研究科分子生理学分野 教授 惠良聖一先生
還元型アルブミンと酸化型アルブミン
N末端から34番目のSH基がフリーの状態で存在するアルブミンを還元型アルブミンと呼び、SH基にシステインやグルタチオンが結合したものは酸化型アルブミンと呼ばれている(
図2
)。酸化型アルブミンのなかでも、システインやグルタチオンが結合した酸化型アルブミンは還元型アルブミンに変化し得ることから、可逆型に分類される。一方、SH基に過酸化水素などが結合した酸化型アルブミンは還元型アルブミンへ戻ることがなく、不可逆型に分類される。ヒトの血液中では還元型アルブミンと、可逆型および不可逆型の酸化型アルブミンが混成している。
約20年前、ヒト血清から還元型アルブミンと酸化型アルブミンを分離し得る高速液体クロマトグラフィー用のカラムが見出され、さまざまな疾患と病態を対象とした研究が進展した。例えば、慢性腎不全患者の酸化型・還元型アルブミンを見ると、その比率は正常とかけ離れているが、人工透析によって正常化することが報告された。われわれも当院第一内科との共同研究において、肝硬変および慢性肝炎の患者血清では還元型アルブミンの割合が極めて低いことを認めている。還元型・酸化型アルブミンの正常比率は、当研究室で検討した健康な45歳男性において、還元型74%、可逆性酸化型24%、不可逆性酸化型2%程度という分析結果であった(
図3
)。
疾患例のさまざまな細胞外液中における微量アルブミン分析
われわれは、血清中のアルブミンの研究以外にも、その他の細胞外液中における微量のアルブミンも分析している。例えば大垣市民病院眼科との共同で、老人性白内障患者の前房水を採取して分析を行った。血清中の値は還元型アルブミンは約66%と正常値よりも低く、老化現象が示唆された。一方、前房水中の値をみると、還元型アルブミンはわずか3.5%であり、圧倒的に酸化型アルブミンが多いというデータを得た。これは、白内障によって酸化傾向となったレンズ内の状態を反映した結果と思われる。一方、糖尿病患者の白内障では血液房水関門(blood aqueous barrier)が傷害されていることから、前房水中の還元型アルブミン率は血清値に比較的近似する場合が多かった。
さらに、われわれは県立岐阜病院口腔外科との共同で、顎関節症患者の滑液を採取し、そのなかの微量アルブミンを分析した。顎関節腔という非常に閉鎖的な空間は酸化状態を呈しているため、正常例であっても酸化型アルブミンが比較的多く認められた。一方、顎関節症患者では、不可逆型の酸化型アルブミンが増加しており、さらに酸化状態の増強されている可能性が示唆された。生体系におけるさまざまな酸化ストレスは、アルブミンのSH基やS─S結合などによってもうまく制御されているが(レドックス制御)、これが不可逆的な変化を受けて生物学的活性を失うと、病態の悪化につながることが想像される。われわれが市販の輸液用ヒト血清アルブミン製剤を分析した結果では、正常なヒト血清に比べて還元型アルブミンの比率がかなり低下しており、強い酸化状態にあることが判明した。輸液用アルブミン製剤に関しては、酸化型・還元型比率の持つ臨床的意義が明らかでないことから、今後の研究課題と思われる。
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